
世界は灰色で、愛さえも「義務」だった――。
「清貧こそ美徳」と教え込まれた村で、心と体を極限まで飢えさせていた兄妹、ハンスとグレーテ。
「このままでは干からびて死んでしまう」
抑えきれない衝動に突き動かされ、二人が逃げ込んだ先は、決して足を踏み入れてはならない「帰らずの森」だった。
闇の奥から漂うのは、脳髄を痺れさせる甘美な香り。誘われるように辿り着いたのは、極彩色の薔薇が咲き乱れる謎めいた館と、黄金の瞳を持つ美女・メリナだった。
「あなたたちは、愛し方を知らないまま、つぼみのまま枯れようとしているわ」
彼女が二人に施すのは、ただの食事ではない。未熟な蕾をこじ開け、蜜を滴らせるための「背徳の教育」。
ハンスに与えられたのは、「闇」。視覚を奪われ、指先の感覚だけで女の肌を奏でる獣への変貌。グレーテに与えられたのは、「鏡」。恥じらいを剥ぎ取られ、自らの裸体を快楽の器として愛でる自己陶酔。
そして準備が整った夜、メリナは告げる。仕上げの儀式、「燃えるかまど」を執り行うと――。
それは、卑金属である「兄妹」を、黄金の「男女」へと変える禁断の錬金術。タブーの扉が開かれる時、二人は本当の「満腹」を知ることができるのか?
グリム童話の皮を被った、極上の官能奇譚。
総字数約9,000字(読了時間約18分)
